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桐谷ヨウ blog

桐谷ヨウのメインブログ。恋愛・コミュニケーション・海外・文章を書くことについて。


鳥井弘文さん、くいしんさんのこと。ー『隠居系男子的』に寄せてー

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『灯台もと暮らし』というカッコ良いWebメディアがある。

ローカル性を押し出して、<魅力的な場所をかたちづくる人>の思いを、丁寧な企画・取材・執筆により公開している媒体だ。その充実っぷりは紙媒体優位主義が揺らぐ内容になっていると思う。

これを運営しているのが『株式会社Wasei』であり、鳥井弘文さんが代表をつとめる会社。俺と彼の出会いは共通の知り合いであるまたよしれいさんが主宰するブロガーズフェスティバル2014年だった。自分はサイボウズ式のメンバーとして、彼は当時所属していたMATCHAの編集長として、ともに登壇していたのだ。

れいさんが俺に話しかけてきて、何の脈絡もなく鳥井さんのことを「彼は(頭がかなり)キレるよ。」と評したことを強く記憶している。大好きなれいさんがそこまで言う彼に興味を持ったのが始まりだった。それにしても彼は何であのタイミングでそんなことを言ったのだろうか。。


その後、彼のブログ『隠居系男子』をぽつぽつ読むようになったものの、ちゃんとした交流が始まったのは共通の知り合いであるタクスズキさんと彼が一緒にB&Bに出演するイベントに足を運んだときだった。(なお、ほとんど記憶にないが、くいしんさんともこのときに出会っていたらしい)

そして2015年には一緒にイベントを開催したり、ブロガーズフェスティバルに一緒に登壇することになった。彼とはそこまで頻繁に会うわけではないけれど定期的に会う間柄になっているし、それを差し引いても、彼の作り出す世界はすごく面白いと感じさせられる。


そこに目をつけたのがくいしんさんであり、それを早い段階で形にしようとしたのが本書『隠居系男子的』である。音楽雑誌『MUSICA』に所属していた彼が、鳥井さんに飲みがてらのインタビューを月いちで重ねていき、2016年の頭に電子書籍として一冊にまとめたものだ。

この書籍自体の感想は、はせおやさいさんが書かれていたことに概ね同意になります。たしかにファンブックとしての性格が強く、強烈にプッシュするには500円は難しい……Kindle Unlimitedに契約している人はぜひ読んでみてほしい。現時点では、そういうノリです。

本来であれば、「彼らの世界」で閉じたまま表には出てこない情報が、対談という形式のもと開示されていて、とても興味深く読みました。賢く老練であるように見える彼らであっても、同時に非常に柔らかく繊細な感情を今も抱えていて、その危うさ、みずみずしさ、というものに触れられたように感じました。

とはいえ、この二人についてまったく知らない人でも面白く読めるかどうか、嫌な言い方をすると、「支払った価格分楽しめるかどうか」で言うと、わたしにはそれを保証できる自信がありません。それは、二人についてまったく知らない人へ向けた前提共有の部分が弱く、あくまでファンブックの域を出ていないからです。
「隠居系男子的。〜灯台もと暮らし運営会社Wasei代表の鳥井弘文が初めて語る自分のこと〜」読んだ - インターネットの備忘録

それでも、と思うのがやはり彼らの魅力についてです。

鳥井さんは独特の立ち位置にある人で、自分の個性を強く押し出さずに巧みなポジション取りをしていくことでその魅力を発揮しているキャラです。(彼が経験したバスケの影響はあるのだろうか……)

ざっくりといえば「頭が良く、センスが良く、信頼に値する発信者」と思われることに成功しています。そして彼の言説が、同世代・下の世代にたしかな影響を与えていることは特筆すべきことだと思う。


言ってしまえば『隠居系男子引力圏』のようなものがインターネットの世界でたしかに存在していて、派手なバズがなくても彼の周囲にはそれに魅せられた『隠居系男子予備軍』が存在しているのです。扇動をしなくてもそれに追従していく人たちがいることが彼のTwitterを見ているだけで感じ取れます。そしてそれはリアルの世界に影響を及ぼす一歩目なわけです。

現時点でもWeb界隈のコミュニティにおいて鳥井さんは「誰もが名前を知っている人」になっていると主観的には思うし、5年後には「誰もが名前を挙げる人」にまで影響力を増していることはまちがいないでしょう。(その頃のWaseiはいま以上にWebを飛び越えて活動している気がしますが)


俺個人として、鳥井さんの魅力はクレバーさ(したたかさ)とナイーブさ(葛藤)です。

あまり多くを書くと嫌がられるのでやめときますが、礼儀正しい彼が日本酒を飲みまくって「乱れる」ときが大好きなわけです。そして同時に、彼の心の内側にふれることができる人は、どれくらいいるんだろうか? ということを時々感じます。

そしてくいしんさん。彼はどんな場でも上質な潤滑油になる類まれなる才能を持っていて、人の話を聞くのがめっぽう上手い。そして頭が良い。

いい意味でも悪い意味でも図々しさがあるんだけど笑、元お笑い芸人の彼の笑い声はすべてを吹っ飛ばす魅力が備わっています。めっちゃ褒めてます。


鳥井弘文さんと「一緒にやりたい」と集まったWaseiのメンバーも魅力的なメンツが揃っていて、次のエントリーで書く編集長の伊佐知美さん、立花さん、小松崎さん、よくこのメンバーが集まったな!と外野からも感じるのが『灯台もと暮らし』の編集部だったりします。


お世辞抜きで『灯台もと暮らし』はすごいと思っていて、たとえば西荻窪・蔵前に関してはWebにおけるもっとも上質なアーカイブだと思うし、最近特集をはじめた松陰神社前は本当にびっくりしました。というのも、俺は世田谷に住んでいるので数年前に彼女と何気なく散歩して「ここ、地味だけど良いね」と言っていた場所だったんです。周辺に住んでいないのにそのセンサーが働くってものすごいことだと思わされるわけです。(ちなみに昨日のフジの番組で「30代女性が住みたい街1位」が西荻であった)

自分はオーセンティックなモノ・コトが大好きで、そういう意味でも彼らの活動をすごく応援しているんですね。たとえば「地方」そのものではなく、「場が人をつくり、人が場をつくる」という当たり前ながらに見すごしがちなことを根底に据えているのが本当に素晴らしくて。


彼らとはお仕事で直接的にコラボレーションする機会はそれほどなさそうですが、自分に出来るときは積極的に援護したいと思いますし、彼らも自分に対してそれをしてくれているのを感じています。

『ワンピース』で喩えれば同じ海賊船には乗ってないけれど、友好関係にある海賊船のグループ。そういう関係性な気がします。

鳥井さん、くいしんさんに興味を持った人は、"ヒトカドの人になるであろう人の前夜"としてのドキュメンタリー本である本書を読んでみてください。

この本は数年後にもっともっと価値が上がっていく、そういう類いの本だと思います。