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桐谷ヨウ@blog

桐谷ヨウのメインブログ。恋愛・コミュニケーション・海外・文章を書くことについて。


元キャバ嬢のトモダチが世界一周に行くと僕に言った

コラム・エッセイ

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東北地方太平洋沖地震が日本を襲った直後、白々しさを感じるオフィスを出て自宅に帰ろうとするあたりで女の子からメールが来た。

「怖いから泊まりに来てくれない?」という内容だった。とりあえず了承した。

で、すぐに彼女んちの最寄り駅で合流して、ひさしぶりに居酒屋でかるく呑むことになった。


彼女とは4年前にニューヨークで知り合った。俺はまだ大学4年生で、カナダに留学していた友人と一緒に9.11のグラウンドゼロを観に行ったのだ。そのときに友人がデジカメの電池が切れたと言い出したので「俺は待ってるから買ってきなよ」てちょっと面白い状況で、俺は適当に腰をかけてひとりで煙草を吸ってた。そしたらちょっと向こうに可愛い女の子二人組がいたから、いつものノリで声をかけた。その娘たちは奇跡的に俺が日本で住んでいる場所の最寄りが近いってことでムチャクチャ盛り上がってすぐに打ち解けた。あまりに3人で騒いでしまって、黒人の女性に「ここはそんな場所じゃないのよ」と嗜められた。

で、彼女たちとはその頃はそんなに仲良くならなくて、その二年後くらいに飲み仲間みたいに急速に関係が近づいた。夜中に呼び出されて飲んだり、呼び出して飲んだり、バカ話やエロ話をしたり、酔いすぎて三人でラブホに泊まったり、でも変に関係が壊れたりはしない友達関係になっていった。仲良くなってから聞いたんだけど、彼女たちは大学2年まで新宿のキャバクラとか六本木のガールズバーで働いていて、出会った頃には俺の自宅も最寄り駅のガールズバーに「近いから」という理由で働いていたらしい。

で、そのうちのひとりが俺は好みだったんだけど、その子とは最後までのエロな関係はなかった。ちなみに彼女は大学を卒業してから、総合職として働く道を選んだ。学生時代のキャババイトもカジュアルな感じで、染まった感じじゃなかったし(最初の頃からお金出させようって感じでもなかったしね)、地頭も良い、北川景子が大好きなちょいヲタの娘。よくいる女の子!って身勝手なところはあるんだけれど。。おたがい社会人になってもたまーに飲んだりしてて、ひさしぶりの連絡がこれだったのだ。

会えばおたがいテンションが上がる関係なことは相変わらずで、地震あった日にどんな感じだったかとか、最近同棲してる彼氏とどんな感じなん?とか、俺の彼女の話とかをしてたりしたんだけど、話題が変わって海外旅行の話になった。出会いが出会いだけに会えば必ず海外どこ行きたいの妄想トークが始まるんだけど(ちなみに「君届」の風早くんと爽子の初SEXはどんな感じになるかを妄想したこともある)、今回はちょっと様子が違ったのであった。

「あたし会社辞めるんだ。」と言い出した彼女は、世界一周をまわるために金を貯めだしたという。よくある自分探し系ですか?と茶化しかけたんだけど目がマジだ。とりあえずはちゃんと聞こう。彼女のきっかけは色々あるみたいで、例えば会社生活の先が見えてきただとか、彼氏と結婚することを考えたときに一番のやり残しを真剣に考えたとか、自分と境遇の似ている元キャバ嬢が世界一周旅行をしているブログにハマったりだとか、それらによって決心したそうだ。

どうやら出会ったときのNY旅行で強く感じた「もっともっと世界を見たい」って気持ちが膨らんだらしい。この言葉ってよく聞くんだけど、少なくとも俺は未だかつて海外旅行・海外出張でこれを感じたことがない。ちょっと他の国の人の生活を覗き見るだけで変わる価値観なんて、どんだけ薄っぺらいんだって斜に感じているタイプだからだ。

そんな俺がちょっと気持ちを揺らがされて、素直に羨ましいと感じてしまったのは、ほんっとどうでも良い話しかしてこなかった友達がこんなことを言い出したからだ。学生時代の留学でも、会社のお金で行く海外MBAでも、バケーションにお茶をにごす程度の海外旅行でもない。取り返しの付かないものを人生において取りにいく選択を彼女がしたことにちょっとヤラれてしまったのだ。


俺も怖いものなしで自意識過剰で自信満々だった学生時代を卒業して、社会人になって、どんどんと普通になっていく自分を感じている。たぶん多くの人がそうだと思う。このまま普通のヒトになってしまうのは嫌だと感じながら、でも実態の伴わない地に足をつけていない空想なんてそれもまたダサいというダブルバインドに苦しんでいるんだと思う。

彼女が出した結論は必ずしもそこをブレイクスルー出来るものではないと思う。けれど、4年前に俺が感じることが出来なかった、人生を左右する選択のきっかけの芯を同じ場所でこの娘は感じ取ったんだな、って思うとちょっと負けた気がして悔しかった。そんな俺は同じベッドに寝ながら軽いちょっかいすら出す気がまったくなくなってしまったのであった。

その後も飲んでも電話しても、今までと変わらずアホ話しかしない相変わらずな関係なんだけど。ちょっと思い立ったので記事として書いてみた。そうそう、世界一周に行く前に舞城王太郎の小説を返してくれよ。